ザンドマイヤー反応(Sandmeyer Reaction)は、芳香族ジアゾニウム塩とCuX(X=Cl, Br, CN)の反応により芳香族塩化物や臭化物、シアン化物を合成する反応です。
反応に必要な芳香族ジアゾニウム塩は通常、アニリン誘導体に対して亜硝酸ナトリウム(NaNO2)と酸を作用させることで調整します。
調整したジアゾニウム塩は一般に反応性が高く不安定であることが多いので、単離せずにそのままワンポットで塩化鉄(I)や臭化鉄(I)、シアン化鉄(I)などと反応させます。
銅塩の対アニオン部は、ジアゾニウム塩の調整に用いるハロゲン化水素酸(HX)の共役塩基と一致させておかないと、生成物は混合物となってしまうので注意する必要があります。
ヨウ化アリールの合成の際には、ヨウ化銅(I)を用いる必要はなく、ジアゾニウム塩にヨウ化カリウム(KI)を添加するだけで置換反応が進行します。
反応機構
(1)ニトロソニウムイオンの形成
- 亜硝酸ナトリウム(NaNO2)に酸を作用させると亜硝酸(HNO2)が生成します。
- 生じた亜硝酸(HNO2)がもう一度プロトン化した後、水分子が脱離することで求電子性の高いニトロソニウムイオンが生成します。
(2)ジアゾニウム塩の調整
- アニリンの窒素原子の非共有電子対がニトロソニウムイオンの窒素原子に求核付加します。
- その後プロトン移動が進行し、最後に水分子が脱離することでジアゾニウムイオンが生成します。
(3)ザンドマイヤー反応
- 銅(I)塩からの一電子移動によりジアゾニウムイオンが還元されてジアゾニウムラジカルと銅(II)塩が生成します。
- ジアゾニウムラジカルは速やかに窒素分子を放出してアリールラジカルとなります。
- 生成したアリールラジカルが銅(II)塩と反応することで目的の芳香族ハロゲン化物が得られます。この際、反応機構としては銅(II)種からアリールラジカルへの直接的に配位子が移動する機構と、銅(III)中間体を経由して還元的脱離により生成物を与える機構が提唱されています。
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