ローソン試薬(Lawesson’s Reagent)はカルボニル化合物をチオカルボニル化合物へと変換することのできる試薬です。
Lawesson試薬は硫黄とリンが交互に結合した4員環構造をしています。これが熱分解により可逆的に開環して活性種であるジチオホスフィンイリドが生じます。
エステルやアミド、ケトンのカルボニル基をチオカルボニル基に変換することができます。
単純なチオアルデヒドやチオケトンは一般に不安定で単離することが難しいです。
これは炭素の2sp2軌道と硫黄の3sp2軌道の重なりが小さいことと、炭素と硫黄の二つの元素の電気陰性度がほとんど同じであることが原因となります。
安定なチオカルボニル化合物としてはチオエステルやチオアミドがありますが、このように酸素や窒素からの余分の共役による弱いC=S二重結合の安定化が必要です。
反応機構
- Lawesson試薬は熱分解により可逆的に開環して活性種であるジチオホスフィンイリドが生じます。
- 分極した活性種であるジチオホスフィンイリドがカルボニル化合物と反応し、4員環の中間体を形成します。
- この4員環の中間体が熱的に開環することにより、チオカルボニル化合物が生成します。リン原子は酸素親和性が高いため、強いP=O二重結合の形成が反応の駆動力となります。
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